【奈良井−贄川】
（奈良井宿…贄川宿まで約７ｋｍ）
薮原宿から約５．５ｋｍ）
半年ぶりの中山道歩きになったのん。
今日は，鳥居峠越えだから
がんばらんとあかんぞん。
大丈夫。
りん子は，冬の間，
姫街道を歩いて鍛えとったじゃんねえ。
姫街道って，この中山道のことかん？
何言っとるの。
東海道の姫街道に，決まっとるじゃん。
そりゃそうだ。
それにしても，藪原駅の裏側の道は
のどかだのん。桜もきれいだし・・・。
あの先で，去年通った地下道からの道と
合流するみたいだらあ。
薮原宿は，去年見たから，
足早にすませまい。
ひいひい。
りん子ちゃん。待っておくれん。
わしゃ，ちょっとの上りでも，結構疲れてまった。
おじさん，早くおいでん。
薮原宿がきれに見えるよ。
尾張藩鷹匠役所跡かあ，見晴しいいじゃん。
ここから飛騨への道が分かれていたみたいだぞん。
ああ！野麦峠。
飛騨から諏訪へ，女工さんが通った道だ。
ああ！野麦峠って。何なの？
りん子，初めて聞いた。
女工哀史というだが・・・。
ほうっ。知らんかん？
いよいよ鳥居峠だね。
桜が青空に映えるね。
ハイキングのグループも，
楽しそうだのん。
わあ，すごい。
ニリンソウやムラサキケマンが
きれいね。
さすが，りん子ちゃんだのん。
わしゃ，
すみれぐらいしか分からん。
それにしても，
登りがつらくなってきた。
何言ってるの，ガンバ，ガンバ。
空が明るくなってきたよ。
峠は，すぐそこじゃん。
ガンバ，ガンバって，
わしゃあ，
ガンバ大阪のファンじゃないぞん。
名古屋グランパスエイトだぞん。
今年は，２チームの優勝争いがおもしろそうだのん。
いつのこと言っているの？
ガンバって，健脚っていう意味じゃん。
健脚おじさん，さあ，ガンバ。
何しろバーチャル道中記だからのん。
ふうっ。
そう言っている間に，峠に到着。
ここからは，御嶽山が見えたそうだが・・・。
しかし，下りは，快適だのん。
あっという間に，
中の茶屋だぞん。
あれっ，りん子ちゃん。
あんな後ろにおる。
さっきのガンバはどうしただん。
おじさん，待っとって！
花がきれいだから，
写真と撮っとるじゃん。
わあっ。ミヤマキケマンかな？
あれは，ヤマブキ。
ヒトリシズカにフデリンドウ。
やれやれ，わがままなお嬢さんだ。
勝手に撮っとりん。
それにしても，
だいぶ下ってきたぞん。
あれは，もしや？
やっぱり，鎮神社。
ついに，奈良井宿に着いたぞん。
おじさん，ごめん，ごめん。
つい，花の写真に夢中に
なっちゃったじゃんねえ。
お待たせ。
それにしても，ずいぶんにぎやかじゃん。
それはそうさ，
ゴールデンウィークだからのん。
それに，
奈良井宿のお祭りみたいだぞん。
へえっ，そうなんだ。
どこの資料館も混んでいそうね。
まあ，贄川まで急がまい。
（贄川宿…本山宿まで約１０ｋｍ）
奈良井宿から約７ｋｍ
りん子ちゃん悪かったのん。
やっぱり，宿場をゆっくり見たかったかん。
それでも，贄川までは，
この倍あるから許しておくれん。
奈良井宿のレトロな感じが
いいんだけど
りん子が，花の写真に夢中になっていたから，
仕方がないか・・・。
この桜の美しさに免じて，許してつかわそう。
奈良井宿をでると，
のどかな風景が広がるのん。
おお，ワイドビューしなのが通る。
奈良井川の流れもきれいだのん。
あれっ，川の流れる向きが違う？
ひょっとして，
私たちは分水嶺を越えたの？
そうだのん。鳥居峠は，
木曽川と信濃川水系の境だかもしれんのん。
木曽平沢は，漆器（しっき）の町だぞん。
こんな谷あいの村は，
漆器で暮らしをたてておっただのん。
はあい，のんほい先生。
漆器って，何ですか？
漆器を知らんのかん？ほう。
漆器と言うのは，
漆の器（うるしのうつわ）のことだがん。
だからあ，
うるしってなあに。
おいおい，漆はかぶれるやつだわ。
うるしという植物の樹液をとって
木の器に塗ると，ぴかぴかになるだがん。
ああ，あの黒光りしたやつ・・・。
なるほどねえ。
しかし，
贄川まで単調な街道歩きが続くのん。
ときおり見えるサクラの花が救いだわ。
ところで，贄川関所って看板にあったけど
こんなところに関所があったのかしら？
わしも知らん。
福島の関所から近いし，不思議だのん。
でも，旅で新しい発見はうれしいと思わんかん。
それでも，立派そうな建物じゃん。
これは，贄川の口留番所跡だって。
新しく，建て替えたんだ。
（贄川駅を見つけた二人は，
贄川宿の見学もそこそこに，
足早に，贄川駅まで歩くのであった。
中央線のワンマンカーでは，
贄川駅から木曽平沢駅までの電車賃を払い，
フリー区間が増えた青空フリーきっぷを
喜ぶ二人であったが，木曽福島駅から千種駅まで
ぎゅう詰め満員で立ちっぱなしで，
疲れ果てたのであった。）
